両側性聴神経腫瘍・神経線維腫症2型を知る




両側聴神経腫瘍・神経維腫症2型とは

両側聴神経腫瘍・神経維腫症2型とは
神経線維腫症2型(neurofibromatosis type 2; NF2)は、両側聴神経腫瘍を主徴とする常染色体優勢遺伝疾患であり,発症率は出生35,000-40,000人に一人で、人種差はないと言われています。親からの遺伝は約半数にしかみられず、半数は体発生時の突然変異で発症する様です。責任遺伝子は(第22染色体長腕の22q12に存在)が作り出すタンパク質merlin遺伝子で
す。merlinは595個のアミノ酸からなる分子量約7万の腫瘍抑制タンパクで、NF2ではmerlin遺伝子に、欠失や点変異などの異常が見られます。予後に最も影響しているのは両側性聴神経腫瘍であり、治療時期と方法に一定の結論は得られず、その治療指針の決定は困難を極めていると言わざるを得ません。腫瘍が小さいうちに外科手術による全摘出または定位放射線治療を行うべきと考えられますが、ガンマナイフによる聴力の温存率は決して高くないことが知られています(30-40%)。

患者の聴覚温存を優先すると、治療時期が遅れて治療は益々困難となる傾向が否めません。すなわち、聴覚の再生、再建療法の進歩が緊急の課題であることが明らかです。これらの聴覚回復方法が進歩進歩すれば、聴神経腫瘍の早期治療が現実的となり、予後の改善が期待されます。

臨床症状

多くの場合,初発症状は聴力の低下,耳鳴りあるいはふらつきかんで発症します。聴力障害は,進行性で感音性難聴であり,通常語音弁別能力は低下しています。前庭神経から発生した腫瘍であるにもかかわらず急なめまいは非常にまれです。
かなりゆっくりとした成長パターンが平衡感覚を代償させているのかもしれません。
10歳代から60歳代にかけて初めてこれらの腫瘍が症状を現します。たいていの場合20歳代から40歳代で発症いたしますが,神経線維腫症2型における腫瘍の成長速度は予想しがたく,40歳以前に発症した一側性の聴神経腫瘍の場合神経
維腫症2型へ進展しないことを確認する必要あります。
神経線維腫症2型
疑われた場合オウジオグラムならびに造影MRIによる評価が必須であります。造影MRIは,内耳道内に限局する聴神経腫瘍を発見するのに最も有効な検査です。小児・若年者症例においては、こうした腫瘍が症状を呈する前に見つけ出すことが可能です。聴性脳幹誘発電位ABRによる診断も有用です。
神経維腫症2型を持つ方々は毎年眼科的診察をお受けになることが重要です。30歳までの間に40から50%の確率で,若年性白内障を併発することが分かっています。このため進行性の視力低下をきたすことになります。
さらに多くの中枢神経系腫瘍すなわち神経鞘腫を併発するリスクが非常に高いです。脊髄神経鞘腫
(9割以上)とくに頸髄神経鞘腫を併発しやすくついで脳神経鞘腫の内三叉神経鞘腫(約50%)と舌因神経鞘腫を効率に合併いたします。これらの腫瘍は非常に急速に成長しうることが知られています。神経維腫症2型の場合,全脳全脊髄にわたるMRIスクリーニングが非常に重要です。その時点で症状のない脊髄神経鞘腫を見つけることが多々あります。そのほかにも頭蓋底髄膜腫ならびに脊髄上衣腫と星細胞腫を合併します。

両側聴神経腫瘍の治療選択

聴神経腫瘍が両側性である場合、初回治療の選択肢は腫瘍の診断時の大きさ,予測される腫瘍の成長様式,患者様の年齢,そして残存する聴力の状態によります。初回治療は原則的に,大型聴神経腫瘍による脳幹圧迫あるいは脳圧亢進による生命予後に対するリスクの軽減を目的とします。ついで少なくとも一側の有効聴力の保全が最大の課題となります。しかしながら神経維腫症に伴う聴神経腫瘍が,隣接する神経を圧迫するよりむしろその神経に浸潤してしまう傾向があるために,有効聴力保存という最高の治療ゴールが不安定とならざるを得ない現実があります。そのため聴力保存を目的とした両側聴神経腫瘍の治療は非常に困難となります。外科手術治療が現在のところ増大傾向を示す聴神経腫瘍の唯一の治療で有ることは間違いありません。
原則として,どのようなサイズの聴神経腫瘍も、もし有用聴力がなければ全摘出すべきものであります。もし有効聴力(電話が使える聴力)あるいは有用聴力(何らかのことが聞こえる聴力)が残存し,腫瘍が
小型または中型で脳幹に癒着浸潤していなければ,聴力保存を目的とした手術は非常にリーズナブルとなります。
ほとんどの聴神経腫瘍は上前庭神経または下前庭神経を発生母地とするため,蝸牛神経を解剖学的機能的に温存し,蝸牛と蝸牛神経の栄養血管を保全しての顕微鏡下手術が可能です。
顔面神経のピンポイント刺激によるマッピング,持続刺激と聴性脳幹誘発電位と蝸牛神経活動電位モニタリングを用いることで安全な手術が可能となります。
腫瘍サイズが聴力保存における最も重要な予後因子でありますが,蝸牛神経と腫瘍との癒着浸潤の有無も重要な予後因子です。腫瘍ができるだけ小さければ小さいほど、蝸牛神経への癒着浸潤の可能性は低くなります。造影MRIによる画像技術の進歩をもってしても,蝸牛神経への癒着浸潤の度合いを画像のみによって推し量ることはできません。
外科手術による直接確認によって初めて,こうした腫瘍の特質を明らかとすることができます。万が一腫瘍が浸潤性で,蝸牛神経との癒着が強い場合には,亜全摘出で止めるか,内耳道周囲骨の除去による減圧により聴力低下の進行を遅らせることが可能です。
当ホームページでは皆様のご相談にメールでお答えしております。   
プライオリテーコンサルト(最も重要な事柄は何かを知ることができます)

ホームへ 次へ