頭蓋底髄膜腫から脳を守る。頭蓋底髄膜腫の種類と治療選択




頭蓋底髄膜腫から脳を守る。頭蓋底髄膜腫の種類と治療選択

1;視神経鞘髄膜腫(ししんけいしょうずいまくしゅ)

頭蓋骨の中の眼球の受入口である眼窩(がんか)の内部にも髄膜腫が発生します。この場合眼球内部の組織圧が上がり眼球突出をきたすことがあります。その場合当然視力喪失の可能性も高くなります。視神経を取り囲んでいる髄膜から発生するこの視神経鞘髄膜腫の場合,腫瘍があるサイドの虫食い状の視野欠損や視力喪失を引き起こします。ほかにも眼球突出を起こすことがあります。視神経管や上眼窩裂(じょうがんかれつ)を通して頭蓋内に進展する可能性がありますが,頭蓋内圧亢進症状を起こすほど大きくなることはまれです。視神経機能を温存しながら,腫瘍を全摘出することは非常に困難なので,眼球運動障害が非常に高度の場合,有効な視力を喪失した場合には外科的手術の適応があります。

2;嗅窩部髄膜腫(きゅうかぶずいまくしゅ)

嗅窩部髄膜腫は,左右大脳の下面で鼻へと連なり、匂いを伝える嗅神経に沿って発生します。全頭蓋内髄膜腫の10%を占めます。嗅窩部髄膜腫は非常にゆっくりと成長し,なんらかの症状を呈する前に大きくなってしまいます。嗅覚障害はほとんどの方で存在しますが,多くの方には気付かれません。無意識な性格変化や頭痛,癲癇発作(てんかんほっさ),視神経の障害などを呈します。多くの場合腫瘍の成長とともに嗅覚が失われていきます。腫瘍がさらに大きくなると目からの情報を大脳に伝える視神経を圧迫し,視力障害視野障害をきたすことがあります。視神経,内頸動脈,下垂体茎(かすいたいけい)の剥離が可能な場合は,硬膜付着部を全摘出することができます。付着部が嗅窩部に浸潤している場合は,嗅神経の温存が困難であるため,嗅神経を切断し,付着部硬膜を全摘出します。両側の前頭葉下面ならびに前大脳動脈の分枝を損傷するリスクがあり,これを最大限に予防することが重要です。両側前頭開頭または前頭側頭開頭が用いられます。

3;鞍結節髄膜腫(あんけっせつずいまくしゅ)

鞍結節髄膜腫も全頭蓋内髄膜腫の10%占めます。鞍結節部の髄膜から発生し,鞍隔膜(あんかくまく),蝶刑骨平面部に進展します。腫瘍が大きくなるにつれて視神経と視交差を上方に圧排し、内頸動脈を外側に,下垂体茎を後方に圧排します。腫瘍は下垂台内部や海綿静脈洞に浸潤することがあり,視神経そのものあるいは内頸動脈を巻き込んでしまうことがあります。ほとんどの患者様は,なんらかの視力障害をもつ場合が多いですが,自覚がないことが多いです。頭痛は非常に高率に合併する症状です。複視や下垂体機能不全はまれです。前頭側頭開頭に加え,眼窩骨頬骨到達法(がんかこつきょうこつとうたつほう)ならびに前床突起切除法(ぜんしょうとっきせつじょほう)が用いられます。視神経機能を最大限に維持するために、持続視覚誘発電位モニタリングを用いた低侵襲手術を行っています。


4;蝶形骨縁髄膜腫(ちょうけいこつえん)、5;中頭蓋窩髄膜腫(ちゅうずがいか)

この髄膜腫は,視神経のすぐ外側の骨である蝶形骨縁に沿って発生します。これらの腫瘍は視力障害、視野障害,顔面の知覚異常,顔面のしびれ感を引き起こします。この部分の腫瘍はときに,大切な大脳の大血管;内頸動脈やその分枝や脳表大静脈とその流入路である海綿静脈洞に進展しこうした重要組織を巻き込むことがあります。特に蝶形骨縁内側3分の1に発生した場合,最も複雑な進展様式を示します。前床突起、視神経管ならびに海綿静脈洞に浸潤することがありますし,内頸動脈を完全に巻き込むことも多いです。この場合腫瘍を全摘出することは非常に困難か不可能となります。症状は,腫瘍の発生部位によりますが,頭蓋内圧亢進症状,脳神経麻痺,脳圧迫に伴うてんかんなどがあります。内側3分の1タイプでは,眼球突出,眼球運動麻痺,視力低下が起ります。前頭側頭開頭に加え,眼窩骨頬骨到達法ならびに視神経管骨切除、前床突起切除法が用いられます。さらに中頭蓋窩骨(ちゅうずがいかこつ)、上眼窩裂骨(じょうがんかれつこつ)の除去が必要な場合があります。


6;海綿静脈洞髄膜腫(かいめんじょうみゃくどうずいまくしゅ)

海綿静脈洞髄膜腫は,三叉神経(さんさしんけい)障害,三叉神経障害に付随した頭痛、眼球突出、眼球運動神経障害,内頸動脈狭窄(ないけいどうみゃくきょうさく)症状をきたします。海綿静脈洞原発のもの,蝶形骨縁内側原発のものが浸潤したもの、前床突起原発のものが浸潤したものの3タイプがあります。外科手術によってそれらの症状を改善することはあまり期待できないばかりか,逆に悪化させる可能性が高く、摘出術の根治性も低いために,外科手術適用は非常に限られたものとなります。蝶形骨縁内側原発のものや前床突起原発のもので、海綿静脈洞外部の腫瘍は、マイクロサージェリーにより安全に全摘出することが可能です。残存する真の海綿静脈洞内部腫瘍は逆に、定位放射線治療の良い適用となります。前頭側頭開頭に加え,眼下骨頬骨到達法ならびに視神経管骨切除、硬膜外前床突起切除法が用いられます。海綿静脈洞外側硬膜は,側頭葉固有硬膜と海綿静脈洞外側骨膜とからなり,側頭葉固有硬膜より外側の腫瘍は安全に摘出できます。三叉神経機能、眼球運動神経機能を最大限維持するために、持続三叉神経誘発電位モニタリングと三叉神経運動枝、眼球運動神経のマッピングを行っています。


7;錐体斜台部髄膜腫(すいたいしゃだいぶずいまくしゅ

斜台上部、内耳道より前方の錐体骨(すいたいこつ)先端部、海綿静脈洞後部,テント切痕部(せっこんぶ)の硬膜の四つの発生母地があり,それぞれで多彩な症状を示します。錐体斜台部髄膜腫は,テント下髄膜腫の約10%占めます(全髄膜腫の1%)。錐体斜台部髄膜腫の臨床症状は非常に分かりづらく,通常3年から5年の無症候期間を経て初めて症状を呈することが多いようです。中年女性に多く見受けられます。症状は四つに分類でき,脳神経症状;三叉神経から下位脳神経(かいのうしんけい)に至る脳神経麻痺の複合症状、第二に小脳圧迫に伴う平衡障害や歩行障害。第3に脳幹圧迫に伴う運動麻痺,感覚麻痺です。第4に頭痛と意識障害を伴う頭蓋内圧亢進症状;中脳水道圧迫や腫瘍の第4脳室圧迫による水頭症によるものです。錐体斜台部髄膜腫の場合,三叉神経を圧迫し顔面の鋭い痛み;三叉神経痛や顔面けいれんを引き起こすことがあります。とくに錐体骨先端部とテント切痕部から発生した腫瘍に対しては前方経錐体骨アプローチの良い適用であります。斜台中部近くまたは内耳道から頸静脈孔(けいじょうみゃくこう)にかけて発生母地を持つ錐体斜台部髄膜腫に対しては後方錐体骨アプローチが適しています。さらに頸静脈孔から大後頭孔(だいこうとうこう)近傍にかけて進展した腫瘍には,後頭蓋窩法に加え後頭課切除到達法(こうとうかせつじょとうたつほう)を追加することで安全に手術が行なえます。これらの前方経錐体骨アプローチ,後方経錐体骨アプローチ,混合経錐体骨アプローチは,私が手術経験を積ませていただいたメイフィールドクリニックにて過去16年にわたり200症例以上を治療した高度に洗練された頭蓋底外科手術技法でありその安全性は非常に高いものであります。斜台陥凹部近傍が死角となるために,ここに腫瘍が残存しやすいことが知られていますが,この部の残存腫瘍の多くはゆっくりと増大するため定位放射線治療の良い適用があります。手と足の運動機能維持のための、持続運動誘発筋電図モニタリング、眼球運動神経のマッピング、三叉神経運動枝のマッピング、顔面神経の持続刺激筋電図モニタリング、聴神経の持続聴性脳幹誘発電位反応モニタリング、さらに嚥下神経、頚部運動神経のマッピングのすべてを融合駆使した低侵襲手術を行い神経機能維持に努めています。


8;斜台部髄膜腫(しゃだいぶずいまくしゅ)

斜台中部に発生母地を持つ髄膜腫の摘出は最も困難であります。先に述べた後方経錐体骨アプローチに加え,経迷路法,顔面神経管の解放ならびに顔面神経の前方移動の手技を追加することによりこの部への到達が安全に可能となります。アプローチの性格上,一側の聴覚障害,中程度の顔面神経麻痺のリスクがあります。現段階では,安全性が確立した混合経錐体骨アプローチと経鼻的斜台到達法の融合が最も低侵襲であると考えています。


9;小脳橋角部髄膜腫(しょうのうきょうかくぶずいまくしゅ)

内耳道の上下後方に付着部を有する錐体骨後面からテント基部にかけての髄膜腫です。聴神経や顔面神経との境界にくも膜が保たれていることが多く,下位脳神経との間にも通常くも膜があり相当大きな場合でも安全に摘出可能な場合が多いです。

10;頸静脈髄膜腫(けいじょうみゃくこうずいまくしゅ)

下位脳神経(嚥下神経・飲み込みの神経)との間にくも膜が介在している場合は安全に摘出が可能ですが,下位脳神経を巻き込んでいる場合には,摘出術に際し下位脳神経麻痺のリスクを伴います。小さければ小さいほど安全に摘出可能であると考えます。特に腫瘍が大きくなり,S状静脈洞や頸静脈球部(けいじょうみゃくきゅう)さらには中耳空にまで腫瘍が浸潤している場合には,後頭蓋窩法と後方経錐体骨アプローチ,さらには頸部からのアプローチを追加することで安全な視野の確保と下位脳神経機能の最大限の温存が可能となりました。


11;大孔前縁髄膜腫(たいこうぜんえんずいまくしゅ)

斜台下部から頭蓋頸椎移行部(ずがいけいついいこうぶ)に発生母地を持つ髄膜腫です。大孔髄膜腫では,脊髄と大脳とを連絡する頭蓋頸椎移行部に発生するため,頭痛や,その他の脳幹圧迫症状;歩行障害などを引き起こすことがあります。延髄前面に腫瘍の首座があるため,前脊椎動脈を含めた脊髄を栄養するすべての動脈静脈を温存することが必須です。大孔の外側縁を形成する後頭課隆起の後方内側3分の1を削除する後頭課切除法により安全に治療することができます。

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